明日、私はいない。
「死者5000人を達成しました」
私が住む国は、年度のおしまいにいつもそう誇る。
今、たった今、私が住んでいる国。
交通事故で死ぬ人が、年間、5000人を下回るとき、
日本のエライ人が嬉しそうなんです。
5000人を目標にしましょうっていうの。
じゃあ明日、君はもういないかもしれないんじゃないか。
***
ひとり無言で目を瞑る。
(一瞬で、感情と思考の塊たちが叫びだす。
(いつも、それに気をとられる。
(ときには浸入されて侵食されてしまう。
ひとり無言で目を開く。
(一瞬で、感情も思考も停止する。
(私は無
(私はいつも、ほんとうにはなにも、感じていない。
ああやっと、静かになった。
今日はなにを考えようか。
うん。
「人は何を人に伝えたいのか」
ひとつ。
モノ・ローグ。
私が私に説明するため。
ふたつ。
ダイア・ローグ。
君が私に説明するため。
***
今日はひとつめのことを考えようか。
***
さて没頭しよう。
僕は僕の感情の整理のために、
私は私にものをかたろう。
さてだから、君はもういい。
ああだから君はもういなくっていい。
読まなくっていい。
もうこの先のお話に、
君がついて来られなくったって。
でももしあなたがぼくを好いていてくれるなら。
そして私の救いに興味があるのなら。
ねえ、少しだけ。
意味なんかない僕の無言のおしゃべりにつきあってくれないか。
***
ありがとう。
(前にすすみたい。
(大きなモノ・ローグを終息させたい。
***
私は何度も死のうとしました。
保育園の10月に、お風呂に沈んで、死のうとしました。
小学校の入学式の日、牛小屋の裏の壁におでこをぶっつけて、死のうとしました。
中学校の最初の日、放送控室、教頭先生がいなくなってから、彫刻刀を手首に刺して、死のうとしました。
高校の陸上部の最初の朝練のあと、部室で消火器で頭を殴って、死のうとしました。
大学が決まった日、中学1年生から溜め込んでいた薬を全部飲んで、死のうとしました。
去年の夏、自分で首輪をつけた日、ベランダから墜ちて、死のうとしました。
誰か、私のために泣いてください。
うそつきはいませんか。
うそつきはいませんか。
うそで泣いてくれませんか。
あなたがわたしの苦しみをわかるなんておもってないんです。
うそで泣いてほしいんです。
うそ泣きをしてほしいんです。
ほんとうにはわからなくっていいんです。
かわいそうね、かわいそうね、って泣いてほしいんです。
わたしに安っぽい同情をください。
***
私は、やり直したい、と切望して、
やり直すために逃げようと、自殺をしようとした。
ほんとは、やり直すことはできないって思って。
「まだ、なにもはじまってねえよ・・・」
***
モノ・ローグ。
***
私を世界につないでくれた手が温かかった。
生きろ
生きろ
生きろ
と、
孤絶の果ての愛を持つ人が百回も言った。
百回、私はその手を切りつけ叩き、焼いた。
痛みを誰より知る人が、ただ、待って。
まちがいつづける私は、また何度まちがうだろう。
それでも今祈るのは、私が伝えられる優しさの確率。
***
ハロー。
間に合いますか。
まにあいますように。
あなたが今夜、生きていますように。
***