夜のこどもたちは夢をみる

子どもに眠りを 大人に愛を

after dark side. 断薬の記録ちょっとまとめ。

私が精神に作用する薬を飲み始めたのは14歳のときだったか。当時処方されたのは三環系と呼ばれるやや古い抗うつ剤(見た目がちょっと特殊なかたちをしていたので記憶に残っている)ともう3種類ほどだった。その後、診断の変遷とともにだんだん処方箋が長くなっていき、最も種類を飲んでいた時期は20種類近くになっており、医師が変わった10年ほど前から種類は激減したものの量はむしろ増えていき、1日当たり1種類シート単位(10~12錠が1シートであるものが多い)で処方されている時期が長かった。

私の主治医は薬を最低限しか処方しないことで有名らしく、私の処方量を知った医者などに「〇〇先生どうしちゃったの」と驚かれることもあった。

今年の初夏に、体調の問題で、治療上薬の禁忌が大幅に増えた。

精神科診察時にそのことを伝えたところ、「死なせるわけにはいかないからもう薬やめるか」と主治医が言い(実は半分脅しだったとのこと)売り言葉に買い言葉のようにして、私はその日から一切の薬を断った。

断薬前日まで飲んでいた薬の種類は6種類、俗にいうメジャートランキライザー(離脱作用の重いものが多い)も2種類含まれており、数は1日30錠を超えていた。

4/23、全て断った。ノートが残っている。

1日目から、当然眠れなかった。この「不眠」は過覚醒を伴い、じっと座っていることに非常な苦痛を覚えた。これが丸6日間続く。6日間、ほとんど横になることもできずに部屋の中をウロウロしてはうずくまり、を繰り返していた。

2日目以降からは、うずくまったり部屋の中を歩き回ったりしながら、かなりグロテスクな白昼夢を見るようになった(眠っていない。ずっと何事かを目を開けたまましゃべっていたらしい)。あたかもスプラッタホラーの画面の中にいるようだ。画面の中にも外にも自分がいて、体を分解されたり人の体をつぶしたりしながら、その姿を眺めている、という状態。現実と幻覚の区別がつかず、ずっと極度に怯えていたらしい。

3日目まではキャンパスノートに書きなぐっていたのだが、ペンを持てなくなってしまい、15年前からつけていたウェブ日記に断薬症状の記録をし始めている。

強行軍の断薬の経験をした関西の旧友に家族が相談をし、(大きく震えたり過去の危機的状況と現在を錯覚し続けたりしていたため)毛布を頭からかぶって、舌を嚙まないようにタオルを噛んでおくようアドバイスを受ける。食事や液体の水を摂れない状態も続いたため、ゼリー飲料を少しずつ吸い込む。(それでも最終的に脱水症状は深刻になった)

4日目に、30分ほどだが落ちるように眠ることができた。20年近く薬なしで眠った経験がなかったため、それがひどく嬉しかった。相変わらず白昼夢や震えは続き、食事も水も摂れない。一度玄関の外に出てみたが、数歩歩くのもやっとで、すぐに引き返した。高熱に浮かされたような怠さで、水分もうまく摂れていないのに(だから?)下し始めた。体力がなくなっていく。

「そうか、命から遠いから寒いんだ」と意味深長なことを叫んでいたようで、全く記憶にない。相当やばかったんだなと思う。汗をかきながら寒いと震えていた。

7日目に4時間通して眠ることができ、ぬるくしたほうじ茶やきゅうり(なにもつけず)ならば口にできるようになった。

そのまま、薬を再開することなく現在に至っている。

断薬は私にとって様々な意味でのターニングポイントだったなと今振り返ると思う。

世界に色彩がつき、意思表示をできるようになり、うまく笑えるようになった。

薬を飲み始めたころからあった嘔吐癖もあっさり霧消し、数日食べずに氷や海藻、キノコや葉野菜を少量しか食べないというような拒食の症状も激減した。

一方でお酒をあまり飲めなくなり、においに非常に敏感になった(道で通り過ぎた人が喫煙者かどうかすぐにわかる)。

世界がリアルになり、自分がリアルになった。仕事にも心から楽しく取り組んでいる。

もちろん「薬を飲んでしまいたい」と心底思うことはあるし、

何よりこのような強行軍的断薬は絶対誰にも勧められない。

そもそも私は、医者(プロ)が必要であるときちんと説明するならば精神の薬を飲み続けるべきだと思っているし、妊娠の予定のない人ならば、あまり深刻に断薬しなきゃと思うこともないと思っている。(ただ高プロラクチン血症にはなるし催奇形性がある薬は多いようなので、妊娠の予定がある人は医師の指導のもとで減らしてもいいかとは思う。それでも自死自傷、他害の危険性があるなら止めるべきではない。自分が生きるのが先決である)

ただ、このとき前述の友人が言ってくれた一言は、過呼吸発作のときにも有用で、よく思い出している。

「断薬症状では死なないから、安心して苦しみなさい」

ただし水は摂らないと危ないので、ウィダーが重宝する。

 

精神の薬について批判的ながらまあまともな本として、読売記者の佐藤光展の「精神医療ダークサイド」がある。間違っても内海某にはまり込むべきではない。インチキ医者にはまるくらいなら薬飲み続ける方が100倍以上安全である。

 

 

 

 

 

精神医療ダークサイド (講談社現代新書)

精神医療ダークサイド (講談社現代新書)