小さな私。
愛ってなんですか?
そんな風に訊かれて、きっとかつて、私は即答できた。
これこれこういうものです、
そしてそれはこれです、って具体的ななにかを提示した。
ほらこれが愛だよ。
それが真で、ほかは全部偽。
神様ってなんですか?
そんな風に訊かれて、きっとかつて、私は即答できた。
具体的な、だれかを提示した。
ほらこれが神様。
ほかは全部偽。
あなたの神様うそのかみさまです。って。
**
今はもう、迷ってる。
かみさまを殺そうって決意したら、かみさまが死んだから。
私の中で生まれた。
神を希求する心が。
そしてひとも、それぞれのなにかを、それぞれの仕方で、なにかを愛している。
私の神は私にしか見えない。だれかの神はだれかにしか見えない。
誰も絶対じゃない、私も絶対じゃない。
誰も、私も、神じゃない。
そんな当たり前のことを。
「私は、私の盃でいただきます」
ちいさい、壊れた、盃。
水はうまく汲めないかもしれない。
いや一滴だって汲めないかもしれない。
それでも、私が水を飲みたいなら、私が使える盃は、これしかないんだ。
私は、私で生きてくしかない。
なんとか。
そして、あなたの盃で、あなたが水を飲むことを、私は尊敬します。
あなたの盃は、私には見えない。
でも、あなたを敬愛しているから。
信頼しているから。
***
聖なるかな、
聖なるかな。
歌はいい。
孤独なひとびとが、喜びをよせあっているように、
なんだか心地好い。
ささやかに、歌をくちずさみたい。
大昔から、
そしてだれかと今このとき、
つながっているような、
エーテルの振動。
私は、
私は、そう、感じる。